「子どもが生まれると今まで慣れ親しんできた生活は一変。自由に行動できないし、これから先の子育てを考えると不安になったり、わけもなく泣き続ける赤ちゃんと二人でいるとこっちまで泣きたくなったり・・・。でも子どもが私の顔を見てニッコリしてくれるようになると、一緒にいるのが楽しくなり、パパに預けてでかけても、なんだか落ち着かなくって早く帰ってきたりして。これって私もいよいよ”お母さん”?」
エンゼル110番では、初めての子育てで「子どもがかわいく思えない。自分には母性がないんじゃないかしら」と一人で悩むママからお電話をいただくことがあります。
母性って何でしょう。辞書によれば「女性が母として持っている性質。また、母たるもの」(『広辞苑』)とあります。また、ホルモンの一つであるプロラクチンが脳下垂体などでつくられて分泌されると、乳腺発育の促進をする他に母性行動の誘導をするそうです。そして妊娠後期から分泌量は増加し、授乳期間中まで高いレベルを維持するとのこと。
でも医学的、動物学的観点からみても、母性には他の本能と同じように個人差がありそうです。それに女性だから、赤ちゃんを産んだからといって、初めから母性がそなわっているわけではないといわれています。
例えば猿のお母さんも初産の後すぐには赤ちゃんを抱けないけれど、それ以後の出産ではちゃんと抱っこするのだそうです。つまり母性は子育てのいろいろな経験を通して育っていくものだということですね。
試しに子育て経験のあるエンゼル110番の相談員に「自分で”お母さんになったな”と初めて感じたのはいつ?」と聞いてみたところ、以下のような答えが返ってきました。
●出産入院中、授乳中に感じた。
●夜泣きで起こされ、自分より優先するものができたと思ったとき。
●あやしたら笑って答えてくれたとき、心から「かわいい」と思った。
●最初、自分が母親だという事実は受け入れ難かったけれど、赤ちゃんが「あ?、う?」と声を出す頃から「かわいいな」と思えて自然に”お母さん”らしくなってきた気がする。
●1歳過ぎ頃に、よその子にイジワルしてしまって「ゴメンね」と子どもの代わりにあやまったとき。
●子どもが2歳頃、お昼寝しているときにおばあちゃんとメロンを食べ、子どもの分を別にとっておいたら、「あなたも”お母さん”になったのね」と言われてハッとした。
●2歳頃、公園でだだをこねてひっくり返っていたら、よその子に踏んづけられてしまい、とてもかわいそうで自分がいたたまれない気持ちになったとき。
●2歳頃、「”お母さん”大好き」と言われたとき。
●幼稚園のお友だちのママから「管理不行き届き」と言われてあやまったとき、子どもがそばで泣いていた。子どものことは親の責任と感じた。
●幼稚園に通いだし、お友だちに「○○ちゃんのママ」と呼ばれたとき。
●これまで具体的に感じたことがない。
相談員の中でも人によって感じ方はさまざまで、なかなかそれらしいものを実感できない人もいます。自分で母性を感じていなくてもはたから見れば十分に母親らしい人もいます。一般的な”お母さん”のイメージにとらわれずに、自分なりに一生懸命子育てするうち、みんなひとりの”お母さん”になっていくのですね。